最も美しいシクロスポルティフ「ラ・マーモット」参戦記 その4 2015参加 弦巻様


 欧州の選手たちの下りは速い、と斉藤さんが言っていたが、本当に速い。

登りで抜いた選手達にバンバン抜かれていく。確かに自分は日本でも相当遅い部類に入るが、それにしても速い。ポールさんが友人と共に追いついて来て、暫く一緒に走っていたが、やっぱりチギラレてしまった。下りきってブールドワザンまではデンマークのアナス選手他23人の選手と先頭交代しながら進み、徐々に消耗したものの自分としてはかなり速いペースを維持できた。頭の中ではツールドおきなわで足切りになったシーンが浮かんでいた。だから余計に思うのだ、自分の足でゴールする、と。

163km地点、ブールドワザンの補給所まで来た。本来なら休みたいところだがそのままラルプデュエズに突っ込む。1815は過ぎていたが、何時だったのかは憶えていない。

誰にも行く手を遮られなかった。これで、自分の足でゴールまで行けるのは確定だ!


○ラルプデュエズ

 登り始めの勾配がキツイ、15年振りに登る山。サラアシで登るより相当シンドイが、想像していたよりは楽だった。これは結構イケルかもと思ったのがいけなかったのか、3km位 行ったところで足がツッタ。たまらず自転車を降りたが、これ位なら暫く休めば復活するレベルだ。芍薬甘草湯を投入し、道端に座っていると我々のチームカー が通った! 加藤さんが俺を見つけてくれたそうだ。ありがたかった。水や補給食を再びもらってゆっくり走り出す。でもまたツルので、復活するまで押して行 く事にした。同じころアルプデュエズを上るサイクリストは、自転車に乗っている、歩いている、休んでいると違いはあるにせよ、なんとかゴールに辿り着こうしている者達の連帯感があった。言葉を交わさなくても頷いたり、ニッと笑ったりするだけで「お互い頑張ろう!」という気持ちが伝わるのだ。

 

21のカーブ毎に歴代優勝者の名前が掲げられている。押し続けて11番まで来た。そこはベルナール・イノーさんのカーブだ。彼は自分にとって最大のヒーロー。私は彼に会うためにはるばるブルターニュのイフィニアックに言ったほどだ。もう一度サドルに跨り、ペダルを回す事にした。なんとか行けそうだ! 実はこの辺りから10%以上あった勾配が7~8%に緩くなるのである。無理せず、しかし着実に回す事に集中した。少しづつ、残りの距離が減って行く。後5km4km3km・・・イケルぞ! スピードは上がらないし、20時を過ぎ流石に夕闇が迫ってきたが、皆も自分も表情は明るくなってくる。

とうとう、ラルプデュエズの街に帰って来た。コース沿いのレストランやカフェで寛いでいる人達から拍手と応援をもらう。「メルシー!」お礼を言う声がうわずっているのが自分でも分かった。TVで 良く出てくるトンネルで暗くなったら少し不安になり、道をまっすぐ行けばゴールなのを知っていたクセに「ゴール何処やったっけ?」と独り言をいったら「こ の道を真っ直ぐだ、着いて来な!」と後ろから声がして、先刻自分を抜いていった若者が前に出た。あれ? 後ろにいたんだ! いつの間に? 

「あ、でも速すぎ!」意外な展開に、思わずお礼を言うより先に注文つけてしまった。彼は振り返りながら引っ張ってくれた。ゼッケンを付けていないので彼はすでにゴールしたか、明日のアルプデュエズ・タイムトライアルに出る選手だろうか。お礼を言ってフェンスのあるアプローチに入る。そしてゴール! 

とにかく自分の足で走り切った。オランダの広重ファン、ポールさんに再会し、お互いの健闘を喜ぶ。

 

それから完走証を戴いた。静かな達成感が心に広がった。

 

○自分のリザルト

4,634/完走者4,679  タイム 13時間439

 

優勝者  ステファノ・サーラ選手 イタリア  5時間5430

最終走者 ジョン・シンプソン選手 イギリス 14時間3439 

 

○翌日 リヨン空港

 復路はミュンヘン経由のフライトだった。出発ロビーで待っているとTシャツに短パン、すね毛を剃った男がいた。「ラ・マーモットに出ましたか?」話かけると「暑かったよね~!」と即、大盛り上がり!

 デンマークのヤンは12時間で完走したそうだ。デンマークの選手は700人もいたそうだ。エントリーの10%である。そりゃコース上で多くの選手に会うわけだ。話題はやがてレースから何時から仕事?と変わって行く。SNSの子供さんの写真を見せてもらった。昨日は選手だったけど「働くお父さん」、なんだよね。彼のおかげで良い気持ちの切り替えができた。

改めて、俺も、頑張ろう。

 

○終わりに

長年の夢を遂に実現させる事ができました。会社やオッティモをはじめ支えて下さった皆様に、そして家族に、改めて感謝の意を表します。

ラ・マーモットは、本当にタフで、物凄く楽しい、自転車イベントでした。欧州の自転車文化の深さと「自転車バカに国境は無い」事を改めて認識しました。

この素晴らしい体験をより多くの人に経験してほしいと思いました。その為には先ずイベントの存在自体を知ってもらわなければと、拙文を投稿させて戴く次第です。


                                                                                   2015年 ラ・マーモット参加 弦巻様 投稿







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