2018 4/3-9 クロアチア・イストリア100マイル 参加ツアー 旅行記⑤ Buzet 88km~ゴールUmag168km


 ウルトラトレイルワールドツアー、クロアチア Istria100もいよいよ後半戦へ突入! 
中間エイドのBuzet88kmを後にして、次のエイド100㎞地点のHUM(フム) 「ギネス認定世界一小さな町」を目指します。

【何度も川を渡るコースへ】
Buzet88kmからは谷あいの運河に沿った堤防の林道をしばらく走ります。ほぼフラットで走り続けられるコースです。
さすがにそれなりに足は痛いですが、まだジョグは十分できる足が残っています。

徐々に山の距離が近くなり、緩やかに上り始めます。この辺りはおとといまでの雨でかなりトレイルがぬかるんでいてマッドコンディションです。
さらに何度も小川を渡るため、できるだけ足をぬらさないように石や岩の上を慎重に渡ります。

足をぬらしてしまうとふやけて豆を作る原因になり、まだこれから10時間以上かかることを想定すると、できる限り足は濡らしたくありません。

平坦な林道も私はひたすらストックを突き続けます。 一歩進むごとに一突き、ひたすらカチャカチャカチャカチャとストックを突き続けます。
ストックを突くだけで、足にかかる体重は2~3㎏軽減されます。それは一回ごとの差は小さいですが、それを何万歩と繰り返せばそのわずかな差が大きな差になります。

なので、平坦も下りも基本ストックを突き続けます。そのため肘が痛くなってきます。いつも左ひじがすごく痛くなりますが、足の痛みよりはましです。

淡々と進み続け、Buzetのエイドをかなり前に出たランナーも捕らえ始めます。日が昇り、だんだん気温が上がってきます。
おそらく日中はかなり熱くなりそうです。真っ青な青空が広がっています。

徐々に山深くなってくるとシングルトラックの登りに入ります。 一昨日の視察オプショナルツアーで見た道が出てきて、もうすぐ世界一小さな町HUMです。


視察ツアー時は小雨のぱらつくどんより天気でしたが、今日は快晴のHUMです。

見覚えのある町に着くと安心します。ここで100㎞到達です。
100マイルレースで中間点の到着と100㎞の到着は、感覚的に非常に大きく違うように私自身は感じます。
まだ約70㎞あるわけですが、100㎞に到着するとどこどなく「ゴールが近づいている」という感覚を覚えます。

そう感じられるのは体調がよい証拠です。内臓がやられていたり、足が完全に終わっているときは同じようには感じません。
70㎞もあると、体調が悪いと絶望してリタイヤを考えてしまう場合も出てきます。

HUMのエイドは教会の鐘塔の建物の中です。約1000年前の建物の中で、自分の足だけで進んできた体に補給をする。
なんとなくドラクエ実写版を自分が主人公でやっているような気分になります。 

ドラクエに出てくるような小さな城壁に囲まれた街の教会で、復活の呪文を唱えてもらう、そんなイメージです。
そして約1000年前の石造りの古い城門をくぐり「ざっざっざ!」と町を出て、また森や山の中を進み続ける。


この辺の距離になると、エイドで会うメンバーはいつも同じメンバーになってきます。

お互いなんとなく意識しているのがわかります。
HUMのエイドには15時間39分で到着、41位まで上がりました。
ここからはもはや根競べです。誰も劇的にペースアップはできません。内臓トラブル、足の痛み、豆、故障などでいかに落ちないか、それだけが勝負です。あとはひたすらハンガーノックや脱水に注意して必要なエネルギーをきちんと摂取し続けられるか、これにつきます。

HUMではまだBuzetでがっつり補給したエネルギーが残っており、あまり空腹感はなかったので、ポテトチップス少々とチョコレートを2かけら食べて、水を補給しエイドアウトします。 


Hum100㎞地点のエイドの後は一度下ってから再度上り返し、かなりガれた急な下りを下って、しばらく林道を進み、大きな湖が左手に見えてくると間もなく到着です。

この湖のダムの先端にエイドがあります。 湖面はとても静かに周りの山々を映し出し、真っ青な空と、明るい太陽に春の花々が咲き乱れて、ここからの景色も非常にきれいでした。穏やかで静かな時間が流れています。



HumからこのButonigaエイド117㎞までは、16.7㎞と全コース中2番目にエイド間が長く、またそれほど見渡せるルートでもないため、「まだかまだか」感がかなりありました。フラットな林道も一部ドロドロマッドで足場を慎重に選ぶ必要があり、ペースも上がらずかなり時間がかかりました。

足も大腿四頭筋がかなり危険な状況になり、ジョグの継続もかなりきつくなってきます。


右のながーい林道はダムの堤防の上の道で、ここからエイドに来ます。エイドの近くには桜がきれいに咲いていました。

このエイドでは、一度座り込みました。ここまでかなり走れる場所も多く、疲弊した足でかなり走ったこともあり、大腿四頭筋はかなり危険な状況です。まだ残り40㎞以上あります。思ったより早く筋力が悲鳴を上げ始め、先が若干不安になります。

カーフガードの締め付けが痛くて、カーフガードを外します。大腿四頭筋に水をかけて少しでも冷やします。

ここでは、バナナを約1本食べ、チョコレートをひとかけら補給、ドリンクは甘いものがもうあまりとりたくなく、真水にしました。
これは内臓が弱ってきているサインです。ここからの補給は特に注意する必要があります。

完全に取りたくならないうちに、少しでも食べれるうちに食べる必要があります。
食べたくないという気持ちに任せて食べないでいると、胃が脱水になり、胃が空っぽになるため、そのあと何か食べても消化不良になります。
なので胃を空っぽにせずに、少しでも何か入れ続ける必要があります。

ジップロックに入れたカントリーマームと柿ピー類はこまめに食べ続けました。

少し足のストレッチをして、重い腰を上げて約15分程度でエイドアウト。
ここからもしばらく川沿いのフラットな堤防を進みます。歩きすぎるとかなりタイムが落ちるので、ジョグをして時々歩きを入れます。

かなり足が痛み、先が思いやられます。

Butonigaのエイドの後は約11㎞で、巨人伝説の天空の町「Motovun」128㎞です。128㎞まで行けば、実際はまだ残り40㎞ですが、「ゴールまでもうすぐ」という気持ちになれそうです。
ここには後半としてはかなり大きな登りを一つ越えてから下り、再度Motovunへ上るコースです。
かなりロードの登りがあり、日影がなくて太陽が照り付けます。時々水をかぶって体を冷やします。
乾燥しているので、風が吹くとさわやかですが、日差しはかなり強く感じます。

ここのロードからの景色も、素晴らしい絶景です。イストリアでは基本高台に家を建てる人が多いようで、交通の便は不便ですが、家の窓から見える景色と日当たりは間違いなく最高です。東京で窓からは隣の家の壁しか見えないという環境はここの住民にはきっと信じられないでしょう。


絶景を眺めつつ、しかし足の痛みをこらえつつ淡々と進みつづけると、最後はシングルトラックのトレイルに入り、ピークを越えます。
山頂には小さな小さな村があり、三角屋根の教会ととても絵になる風景です。


この辺に来ると、距離の短い別のカテゴリーとコースが合流し、結構な数のランナーが同じコースを走り始めます。

最長カテゴリーである100マイル(168㎞)の赤ゼッケンは、ほかのカテゴリーの参加者からもリスペクトされ「Bravo!Good Luck!」とたくさんの応援の声をもらい、元気が出ます。

抜かすと「ちょっと、100マイルも走る人に抜かされたよ!私らもっと頑張らないと!」的に、頑張ってるついてくるランナーも。
Motovun手前のピークを超えると、正面に天空都市 Motovunの姿が現れます。
一回下まで下って、またあそこまで登るのか!とコースを一望してやや気持ちが萎えますが、見える範囲ということは思っているより近いものです。

下りも走り続けることは厳しくなり、ジョグしたり、歩いたりを繰り返してコツコツ進みます。

Motovunのふもとに到着すると、トレイルを一気に登ります。 途中から中世に作られた石畳の旧坂を上ります。
視察の時はほんのちょっとに思えた登りが偉く長く感じます。

やっとの思いで、見覚えのあるMotovunの見晴らしの良いテラスのあるカフェのある頂上へ着きました。
このカフェで無性にジェラートを食べたいという衝動にかられましたが、我慢しました。
でも、本当におなかがすいていたら、ここのレストランで、きれいな景色を眺めながらがっつりご飯を食べてもよいと思います。
大会スタッフもおいしそうにビールを飲んでいました。



エイドは頂上から石畳を下って少し行った駐車場に仮設テントで設営されています。
視察ツアーでここに車を止めたので、よく覚えています。
Motovunのエイドには20時間15分 38位で到着しました。

体は満身創痍ですが、順位は着実に右肩上がりで来ています。
この先で大崩れしてしまわないよう、慎重なレースが求められます。
それにはとにかく食べ続けること、それが最重要課題です。

ここで、ジップロックに入れてきた「みどりのたぬき」にお湯を入れてもらい、補給します。
かなり食欲が落ちてきており、普通の補給は厳しくなってきましたが、食べなれた日本のそばは体にしみわたります。
「うめええ」とつい心の声が、口に出ます。

エイドに並ぶ食べ物にあまり今の自分が欲しいと思うものがなくなってきて、リンゴとレモンをかじってみます。
ここで「みどりのたぬき」があったのには命拾いをしました。これがなかったら、あまり補給できずかなり危険だったかもしれません。

Motovunの次のエイドは約8㎞でOpltraj(オプルタル)で、大会中最もエイド間が短いセクションです。
しかしながら、足がかなり崩壊し、さらに眠気まで出てきました。モチベーションはこのころが最も下がっていたかもしれません。

しぶしぶ歩き出し、Motovunを下ります。もうここまでくればゴールまでの雰囲気は視察しているのでわかります。
「完走は絶対間違いない」
それは確信できました。

オプルタルへの登りは、弱り切った体にはなかなかパンチのきいたのぼりでした。
Humあたりからずっと抜きつ抜かれつしていた同じ100マイルのランナーで私より前でエイドアウトしていた選手が、急な登りの林道の日陰にへたり込んでいました。 確かにここの登りが一番暑かった気がします。
最も気温が上がる時間帯にここに来ました。 フラスクの水を時々かけながら、熱さでボーっとしてくる頭をリフレッシュします。

オプルタルへの登りは何度も偽ピークがあり、「ついたか?まだか?」を何度も繰り返します。

やっとの思いで頂上を超えると、ロードに入りオプルタルの町に入ります。ここも天空都市のひとつで素晴らしい見晴らしです。
エイドは町中かと思ったら、はるか先の少し下った道の途中にエイドらしき仮設テントが見えます。

距離的には500mぐらいでしょうが、今の私にロードの下り坂はもはや拷問です。ジョグと歩きを繰り返し、何とか進みます。
この辺では4つの異なるカテゴリーのランナーはすべてボリュームゾーンに来たようで、かなりたくさんランナーがいて、寂しさはありません。
だけどエイドが思いがけず混雑してしまい、なかなかほしいものにたどり着けません。

ここでは、ジップロックに詰めた赤いきつねうどんにお湯を入れてもらい、食します。
日本の味は100マイル後半には染み渡ります。

短い距離の選手たちが次々にやってきて、エイドがごった返しています。
しかし、私の赤いゼッケンを見ると皆応援してくれるので、ほかのカテゴリーのランナーがいてくれると気持ちがまぎれます。

【オプルタルを過ぎたら、残す登りは145㎞グロジュニャンへの登りのみ】

136㎞のオプルタルを過ぎると、コースプロフィール上は残す大きな登りは次のエイド「グロジュニャン148㎞地点」手前の登りで最後です。
グロジュニャンからゴールまでの約20㎞は基本ほぼ下り貴重なはずで、大きな登りはもう存在しません。
この100マイルで超えるべきラスボスです。

とにかくそこさえ超えてしまえば、あとは何とかなる。その一心で、オプルタルのエイドを後にします。
ここからは走りやすい林道の下りと、シングルトラックのかなりフラットなトレイルで、元気ながものすごく気持ちよさそうなルートです。
しかし足が崩壊しているので、ひたすら歩いたりジョグしたりを繰り返し、コツコツ距離を稼ぎます。

疲労と、睡眠不足でアドレナリンが全然出ていないのがわかります。とにかく黙々と進み続けます。

ほかの短い距離カテゴリーには女性の参加者が非常に多く、女性ランナーにもたくさん抜かれます。
ですが、みんな赤ゼッケンの100マイルの選手には声をかけてくれます。なので、何とか頑張れます。
もしここで全く人がいなかったら気持ちが切れていたかもしれません。

グロジュニャンのエイドへのラスボスの登りは、かなりたくさんの別カテゴリーのランナーに囲まれながら進めたので、きついなりに集中力は切らさずに進めました。山頂についてからここも少し下って、城壁の門をくぐり、町を横断してエイドにたどり着きます。

グロジュニャン到着23時間56分 38位で到着


もはや満身創痍、疲弊しています。
ここからゴールまで約20㎞、基本下り貴重です。時速6㎞出せれば3時間20分ぐらいでゴールできるはずです。
痛みをこらえてジョグすれば27時間台でゴールできそうです。

ここで、何とか27時間台でゴールしたいという目標を立てます。

しかし、かなり腹も減っていたので、最後のジップロックカレー飯を作ります。

このカレーメシのエネルギーであと20㎞を走り切らなくてはなりません。摂取カロリー的にはかなりギリギリな感じがします。
ここでもカレーメシを食べ「やっぱり100マイルにはカレーメシ、これに尽きる」そうしみじみ思いつつ、おいしくカレーを完食します。

ゴール前10㎞でハンガーノックになったらラスト10㎞は最低2時間かかってしまうつもりでいないといけません。
今までのウルトラトレイルで20時間超で内臓トラブルを起こしていないのは今回が初めてです。

今まで12時間以上のレースでは必ず内臓トラブルを起こし、食べれなくなったりリバースしたり、必ず大幅にスローダウンしてしまうことを繰り返してきました。しかし今回は危ない感じはありつつも、土俵際で食い止めています。
とにかく最後までグロッキータイムを作らないように、ここでもしっかり補給し、エイドアウトします。

【最後のエイドBuje155㎞間で左ひざ痛が発生】

グロジュニャンからはかなりフラットの緩やかな下りの林道が続き、本来ならかなり稼げるセクションでした。
しかし、今までのトレラン歴で初めての左ひざ内側の痛みが発生。明らかにひざのジョイント部が着地ごとにピリッピリッ!といやな痛みが走ります。

この痛みは今までのラン人生で初めてです。まだゴールまでは3-4時間は最低かかるので、悪化してしまったら、たったこれだけを残してゴールも危うくなります。ずっとテーピングを張ってきましたが、テーピングをはがしたら改善するかと考えはがします。

しかしあまり変わりません。全く走れなくなってしまい、緩い下り基調の林道をとぼとぼ歩いていると、はるか前に引き離したはずの100マイルのランナーに次々抜かされ始めます。

100マイルはこのラスト20㎞でしっかり進めるかゾンビ化してしまうか否かで、完走タイムも順位も一気に変わります。

ここまできついながらも順調に右肩上がりで順位を上げてきましたが、ここで初めて順位を落とし始めます。
最低限ジョグで来ていれば27時間台の感想が見えていましたが、この漢字は時速4㎞のキープが精いっぱいな感じです。
時速4㎞だとノンストップでもゴールまで5時間かかります。

5時間かかると、完全に火が暮れて22時ごろゴールの予測でまたナイトランしなくてはいけません。

この「もう一度ナイトラン」を考えたときに、自分の脳が激しく拒否反応をしました。
「いやだ、絶対に嫌だ。どうしてもナイトランせずにゴールしたい」

自分の思うように走れない自分自身の状態と、それにより再度ナイトランをしなくてはいけない可能性が高いということ、せっかくここまでうまくいっていたので、またもや最後の最後で崩れていきそうな自分自身に猛烈な怒りのような感情が沸き上がります。

なるべく飲まないようにしていたロキソニンをついに飲みます。とにかくちゃんと完走したい。
痛みさえなければかなり走りやすい緩斜面のトレイル、無理やり走り始めます。

痛い。猛烈に痛い。内またにしてみたり蟹股にしてみたり、とにかく痛みの出ない走り方を探ります。
グロジュニャンから最後のエイドであるBujeまではほとんど走れる緩やかな下りと平坦のトレイルで7.6㎞しかありません。
ジョグだけで来ていれば1時間で着くはずです。

この辺から頭のねじが壊れ始めます。 

「痛い!、いや痛くない。痛くないんだ。気のせい。次のエイドまで絶対1時間以内につく!絶対1時間以内!」
頭の中で叫び続けるように自分を鼓舞し始めます。

「ナイトランは嫌だ、絶対に嫌だ、死んでも日暮れ前にゴールしてやる。足は痛くない、絶対にいたくない!」
痛みをアドレナリンと怒りの力で消そうとします。
ロキソニンも多少効いたのか、あまり痛みが気にならなくなります。

【ついに最後のエイドBuje155㎞へ】

ついに最後のエイドBuje155㎞が見えてきました。意地で走り、ちょうどグロジュニャンから約1時間で到着しました。
「よし!できた」
残すはあと12㎞。 時刻は18時14分を回ろうとしています。 日暮れ前にゴールするためには2時間以内で絶対にゴールしなくてはいけません。
「なにがなんでも日暮れ前にゴールする」

猛烈な強い意志が自分を突き動かします。


Bujeのエイドのボランティアの皆さん。どこのエイドも素晴らしいホスピタリティでした!

ちょうどほかのカテゴリーのボリュームゾーンにちょうど当たっていたため、エイドもかなり混んでいます。
グロジュニャンで最後のカレーメシをためているので、おそらくゴールまでエネルギーは持ちそうですが、念のためエイドにあったアップルパイを半分頂、コーラを一杯飲み、エイドストップ1分足らずでエイドアウトしました。

【最終エイドBuje155㎞から、ゴールまでの12.8㎞を大爆走!】



「ここからゴールまで全部走る、絶対に全部走る!」

頭がおかしくなってきていて、とにかく帰りたい一心で、猛烈に痛む足をねじ伏せるように全力で走り始めました。
Bujeの町を抜けるまでは上り坂。多くのランナーが歩いている中、ストックをバシバシついて駆け上ります。

それを超えるとアスファルトの急な下り、すでに崩壊している足には拷問のような衝撃が走ります。
「くそやろう、絶対走り切ってやる」
自分自身にそう怒鳴りつけて、短い距離のカテゴリーの選手をバンバン抜かします。

どんどんアドレナリンが出てきて、劇的なペースで走り始めます。もうやけくそです。どこまで続くかわからないけれど、とにかく行けることろまで突っ走ってやろうと、猛烈な勢いで走り始めます。

おそらくスタートから見ても、最も速いスピードで走りました。

この100マイルずーっと抜きつ抜かれつしてきて、グロジュニャンの後、足の痛みでとぼとぼ歩いていた時に抜かされたランナーに追いつきます。
と同時に猛烈なスピード差で抜かしました。
「マンマミーア!!」
100マイルの同志からの声が聞こえます。

自分でもびっくりです。100マイルの最後の最後にこんなに力が出ることがあるなんて、ロードは㎞4分30、平坦なトレイルは㎞5分~5分半でひたすら走り続けます。 別のカテゴリーのランナーたちがたくさんいるので、おそらくこの区間だけで100人は確実に抜いたでしょう。

足の痛みをアドレナリンで打ち消しているので、勝手に涙があふれてきます。脳は痛みを感じていないけれど体はきっと痛いのです。
脳だけを完全にロックして、痛みを感じないふりをしているだけです。

プロフィール上は下り基調でも何回か登りが出てきます。そこもすべてがしがし走り抜けます。

「早くゴールしたい。早く帰って風呂に入って寝たい。ナイトランは絶対したくない!足は絶対いたくない!」
このセリフを頭の中で何度も何度も叫び続けます。

するとまた一人、いや二人!100マイルでずーっと抜きつ抜かれつしてきて、最後引き離されたランナー二人を見つけます。
「どおおりゅあああ!」

ほぼほぼ歩きに近いジョグで進む二人を、㎞4分台並みのスピードでぶち抜きます。
どこからこのすさまじい力が湧いてくるのか自分でも全く謎です。

一瞬で置き去りにし視界から消えます。

100㎞や40㎞のカテゴリーのランナーもみんなびっくりして「え?赤ゼッケン?信じられない!!」
という声が何度も聞こえます。それがますます自分のテンションを上げてどんどんペースが上がります。

12.8㎞を1時間でゴールしてやる。 当初3時間を見越していた最終区間を一気に1時間でクリヤしてやろうという野望に満ち溢れ突進します。
この区間だけは「俺は最強だ」そう確信が持てる爆走でした。

約40㎞前から背中を見失って先行していたランナーさえも捕まえます。
すでに引き離されてから6時間以上たったランナーの背中をとらえたときはテンションが上がります。
「どおおりゅああああ!」
すでに歩いている彼を、㎞4分台でぶち抜きます。もちろん彼自身、もはや追いかけようという気持ちもなかったと思います。
むしろ「あいつは何をやってるんだ?」ぐらいの感じかもしれません。

別に優勝争いをしているわけでもありません。でも、とにかく自分は日が暮れる前にゴールし、一刻も早く風呂に入りたかった。
もうその一心が私の体を突き動かしていました。

とにかく走って走って走りまくりました。まさに火事場のくそ力 そのものでした。
レース後の足の崩壊具合が怖いな、ともちょっと思いながら。
なぜなら一度は完全に走ることができなくなり、膝からも未知の痛みが出た後に、この爆走をしているからには、その付けは結構でかいだろうと容易に予測できました。

一時は29時間代でのゴールを覚悟していましたが、今は26時間台を目指して突進しています。実はすべての計画が完璧に機能すれば、もしかすると25時間台は行けるのではないかと、かすかに脳裏に考えていました。予定よりかなり早くに走れない状況が来たものの、それに限りなく近いタイムが出せそうです。
100マイルの最後の12.8㎞は決して短い距離ではありません。
ひたすら走っているので、なかなかつかない感が半端ありません。

「まだか、ゴールはまだか」
時々猛烈な足の痛みがぶり返しますが、振り払ってペースを上げます。絶対歩かない、何がなんでも日暮れ前にゴールする。
何度も何度も自分に言い聞かせます。

延々と畑と川沿いの農道トレイルを駆け抜け、遠くに買い出しなどをしたスーパーマーケットが見えてきます。

「もうすぐゴールだ!」
スーパーマーケットからは100mぐらいでゴールなはずです。
時間は26時間20分を経過。
「26時間30分以内にゴールする!!」
さらに目標設定を上げて、最後の猛ダッシュ!
ラスト500mはおそらく㎞4分30を切っていたはず。それぐらいの勢いで突っ込んでいきました。

ゴールの体育館が見えてきます。最後の交差点とロータリーを抜けて、ゴールのアーチに飛び込みます!!

ついに、ついに、168㎞の長旅が終わりを告げます。
カーペットを敷かれた立派なゴールアーチに飛び込みます!
「やったああ!」

ガッツポーズでゴール!!
2回目の100マイルを無事に完結することができました!

【感動のゴール!! 26時間27分13秒 総合34位、アジアランナー1位でゴール】


最後の12.8㎞で5名を抜かし、総合34位 最後の劇的な追い込みで予想外の26時間24分でゴールすることができました!

人間の体って本当に面白い。あんなにボロボロになっていたのに、もう走れないと思っていたのに、
「もうナイトランをしたくない、早く風呂に入りたい」
そのモチベーションだけで、こんな火事場のくそ力が出るなんて、自分のことながら面白い。

発表されたリザルトを確認してみると、この最後のBujeエイド155㎞地点からゴールのUmag168㎞までの通過タイムは、優勝した選手よりもさらに7分早く、この区間で最も速いタイムで私はゴールしていたようです。

それを見て「やっぱり」と思えるほど、猛烈な追い込みが入ったラスト12.8㎞でした。


この日は、キッズレースも開催され、多くの子供たちもこのウルトラトレイルワールドツアーのゴールアーチをくぐりました。


【100マイル初挑戦にお勧めのIstria100】

今回フィールズオンアースで初めて開催した100Miles of Istria参加ツアー。
実際に走ってみて、海外100マイルレースの初挑戦や、女性の100マイル挑戦にも大変おすすめなレースと感じました。
また、UTMBポイントを確実に6ポイント獲得したい方にもおすすめです。

100マイルレースはどんなに獲得標高が少なくても、間違いなくきついレースです。しかしながら、このコースは常に景色に変化が多く、ロードや林道もその多くで景色を楽しみながら進むことができました。
制限時間もコースの難易度に対してかなり余裕があり、フラットな区間のみジョグを混ぜながら、長時間のストップさえなければ、歩き続けることができれば完走できる可能性が非常に高い100マイルです。

マーキングも非常に多く設置され、ほとんどロストの話題を聞くことはありませんでした。
滑落などが懸念されるような、極めてテクニカルな場所も少なく、気候も暑すぎず寒すぎず、最適な気候だったように思います。
雨天になった場合はかなり足場がマッドコンディションになり、夜間はかなりの寒さとなりそうですが、今回は快晴に恵まれベストコンディションでした。

旅行としても中世ローマ時代の建築や街並み、巨人伝説の伝わるこの地方独特の天空都市訪問、トリュフや地酒酒蔵の訪問など、楽しめるプログラムがたくさんあり、応援、サポートでのご参加もとても楽しめること思います。

まだまだ、日本にはなじみの薄いクロアチアという国に訪れるきっかけとして、この大会をきっかけにぜひクロアチアに訪れてみてください。

2019年、皆さんの挑戦をお待ちしております!


























 







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