グランレイド・レユニオン Diagonal des Fous スタッフ参戦記 愚か者への道 ⑤Maido~ゴールへ


ラスボスと名高いMaidoの登りを超え、頂上のエイドはとにかく寒かった。

急いで準備し、歯をガタガタ言わせながらエイドアウトする。すると 「おい!ちょっと待ってくれ!俺と一緒に行こう!」そう声をかけて来たランナーがいた。

【ディアゴナルの相棒 ジョーとの出会い】

ジョーと言う速そうなランナー。

「ちょうどライトが消えそうで一緒に来てもらえるとありがたい! 」と伝えると、照らしてやるから一緒に行こう!と 共に下ることに。

次のエイドまでは13kmの下り。だがこのくだりは曲者だった。なんどもアップダウンを繰り返し全く降っていかない。私のライトはなんと5ルーメンまで光量が落ちてしまい、ジョーがいなければ瀕死の状態に陥った。しかし、そのジョーが眠気にやられ「あーねむい!やばい!ねちゃう!」と何度も減速。必死に「がんばれ!寝るな!ここで寝たら低体温で死ぬぞ!」と声を掛ける。

しばらくすると今度はジョーが「ダメだ!ウンコがしたい!」と言い出す。ジョー、頼むよ、俺は早く降りたいのにお前のお腹が降ってどうする。

仕方なくジョーの野糞を待つ。待つ間に数人に抜かれるが、ここまで照らしてくれたジョーを見捨てるわけにもいかず、彼の用が済むのを待つ。

レユニオンで軍隊に努める超おしゃべりな相棒ジョーのおかげで、後半はかなり良いペースで進めた

ジョーのウンコが終わる頃、ちょうどもう一人来たので、ライトが消えそうで一緒に行って欲しいと頼む。

ブルターニュからきている選手で長身で速い。必死でついて行く。くだり足が死んで行くのがわかる。しかし、ここで離れるわけにはいかない。

いつライトが完全に消えるかわからない。

ジョーは新たな話し相手を見つけ眠気から復帰していた。3人で色々話しながら果てし無く終わらない下りを降り続けた。

長い、本当に長いくだりだった。レユニオンの真のラスボスは、このMaidoからSans Souciの超絶長い下りだと思う。
Maidoで出し切ってはだめだ。そう痛感した。

やっと、やっと街に入り 29時間20分 262位で127km Sans Souci のエイドに到着。

ジャラベールは30時間48分 291位で到着している。

【Sans Souci「心配ない」という名前の、何時着くか全くわからず心配になる124kmのエイド】

このSans Souci という町の意味は直訳すると「心配ない」と言う意味なのだが、行けども行けどもたどり着かず、誰しもが心配になりまくる真逆の街であった。

今まで無敵に感じた私の足は完全に終わりを告げ、崩壊していた。このエイドには名物のクレープと飲むヨーグルトがあり、クレープと飲むヨーグルトをいただく。美味しい!また整体師がおり、マッサージを受けることにする。

足を洗い、美しい女性マッサーがクッサい日本人のオッさんの足を揉んでくれるのは申し訳ない。

毛布に包まり、揉んでもらうとたちまち寝落ち。

15分で起こしてくれと伝え、眠りに落ちる。

スタッフに肩を揺すられ15分の眠りから目覚める。体が重い。しかし!ここにはソシスランティーユがあるらしい!!

嬉しくなって食堂へいき、大好きなランティーユソシスを頂く。相変わらず美味い!クレープと合わせて腹一杯だ。

残すは約42kmここからフルマラソンだ。体は満身創痍だが、完走は確実と感じていた。あとは不意の転倒や負傷に最大限の注意が必要だ。足にはマッサージオイルや汚れでもはやテーピングが着かず、テーピングなしの状態だ。

走り出しは足が痛すぎてやばかったが、ここでついにロキソニンにお世話になる。体が温まるとまたジョグできるようになり、平坦はしっかり走った。

ここからゴールまではもう低山しかない。急に村を抜けるローカルな草レースのようなコースになり妙な安心感。無数のニワトリの鳴き声とともに

夜が明けてきた。この辺りからロードに出たりトレイルに入ったりを繰り返す。施設エイドでおばあちゃんがコーヒーを振舞ってくれて心温まる。そのごサトウキビ畑の中を藪漕ぎするように抜けると、岩ゴロゴロの偉いテクニカルなジャングルセクションへ。走れる林道も多数あった。標高も下がり暑くなり再びノースリーブになる。

この区間もひたすらおしゃべりジョーと一緒に進む。彼のおかげでダレずに後半も距離を消化できた。

最後の大エイド la possesion は143kmぶりに海沿いの海抜ゼロメートルのエイドに 33時間55分 236位で到着。ジャラベールは35時間43分 297位。大会時は私はジャラベールからリードしているのかどうかは分からなかったが この辺りで勝てるのではないかと感じていた。

【フランソワデンヌが泣いたChemin de anglais 】

ここから最後の難所 Chemin de anglais と言う、昔イギリス占領時代に作られた火山岩の恐ろしく荒れ果てた日照りの石畳を登るセクションだ。

イギリス軍が作ったと言われる、真っ黒な火山岩の石畳、シュマン・デ・ザングレ

ここは2015年に無敵の帝王フランソワデンヌが苦しさで泣いたと言う、伝説のセクションである。標高も斜度も大したことはないのだが、ここまでの厳しいエリアで消耗しきった体にはまったく日陰のない見渡す限り続く黒い石畳を進むのはメンタルに応える。

しかし私にはジョーと言うおしゃべりな相棒がおり、みるみる元気になるジョーに引き回されてガシガシこのセクションは攻めまくった。

151km Grand Chaloupe を35時間28分で通過。最後の最後の上りに入る。満身創痍だが着々と迫りゴールを感じ、どこか心地よい。動き続けた登り足もついに力つき、同志のジョーについて行けなくなる。最後の上りははるか向こうに見える白い水タンクまで登るとジョーが教えてくれた。めちゃくちゃ遠くに見える。でもとにかく進めばつく。足裏が痛い、足首も痛い。左足はまっすぐ伸ばせなくなった。でも、もうすぐゴールだ!

しかしこの最後の上りは丹羽さんも大瀬さんも皆口々に曲者と言わせる嫌な上りだった。傾斜はきついが景色も日陰もなくいつまでも頂上につかない、何度もロードに出てはくだり、標高を下げてからまた登るいやらしい設定。

後から聞いたが昔は最後の山まで国定公園のMafateのようなトレイルだったらしいのだが、貴重な保護動物の鳥の繁殖地を通過していたらしく、現在のルートに苦肉の策で変更になったそうだ。

私は約37時間を15分の睡眠だけで乗り切って来たツケがついに回ってきた。眠気は大丈夫だったが、もう力が出ない。下り足は壊滅した。くだりは一歩一歩に激痛が走る。頂上に出ると突然天国のような広い広い芝生の広場に出で眼科に真っ青な海が広がっていた。

涼やかな風が吹き、体を冷やしてくれた。

「綺麗だなあ、天国ってこんな所だったら良いな」 そんなことを呟いた。そして、ついに最後の水エイドに到着する。あと5kmで、長い長い旅が終わる。

シロップ水を補給し、すぐにエイドアウト。疲れ切っていたが、ここで休むより早くゴールしたかった。

もうヨレヨレだった。最後の下りまで世界のグランレイドレウニオン は休ませてくれなかった。最後まで激烈テクニカルな危険な下りだった。

木につかまりながら、ウグッ!ウォッ!イタタ!と叫びながらヨタヨタ降った。

たった5kmなのになかなか着かなかった。

はるか前に抜かした数名にかるーく抜き返されたが、もうどうでも良かった。

【ついにやって来た Stade du Redoute】

一歩一歩ゴールへ進んだ。高速道路が見えてきて最後の計測を過ぎるとスタッフに 大会Tシャツ絶対着なさいよ!と注意される。

そうこのグランレイドレウニオン のルールでスタートとゴールは必ず大会から提供されるシャツを着なくてはならない。着ないからといってペナルティは?だが、着ないでゴールする選手はほぼ居ない。私は最後のドロップバックに入れ忘れてしまい、丹羽さんのサポートの田辺さんにもし渡せたらゴール前に下さい、とお願いしていた。高速の下をくぐり、ついにゴールのスタジアムが見えると 田辺さんが待っていてくれた。

「おーい!田辺さん!」と叫ぶと「わあ!はやい!すごい!」と迎えてくれた。ゴール直前で大会Tシャツに着替え、www.fields-on-earth.com のフラッグを貰い、St Denisの Stade La Redoute に入る。


最後のトラックに入った瞬間、一瞬泣きそうになる。でも、笑顔でゴールしなきゃと、飲み込んだ。

そして、丹羽さん、大瀬さんに迎えられて、ついについに 私のはじめての100マイルを完結した。

【165.69km 総獲得標高 9553m 38時間44分14】

【総合226位 マスター1カテゴリー 76位】

そして、一度は完全に諦めた私の密かな目標、ローラン ジャラベールへの挑戦。 ローランジャラベール 41時間28分06秒 310位。今までどんなに追いかけても、決して届く事のなかった憧れスーパースターを、この超絶に過酷なウルトラトレイルワールドシリーズという世界最高峰の大会で、ロードレースではありえない、165kmで9553mと言う過酷な舞台で、はじめて越えることができた。

私が胸の内で1年間温めていたミッションは、見事にコンプリートされたのだった。

出場が決まったのは大会の約1ヶ月前だったが、時間が短いなりに極めて集中して良い練習ができていたので、かすかな期待はしていたが、本当にそれを実現できて本当に嬉しかった。

やったこともないスポーツを全くのゼロから始め、今日ワールドツアーのグランレイドレウニオン で、私はローラン ジャラベールに約1時間30分の差を付けてゴールした。やれば出来る、やれると信じて頑張れば出来る、その事実だけは自分は達成した。そして、それは素晴らしい達成感に溢れている。

この大会を走れて本当に良かった。

ずっと自分の中に掛かっていた霧が晴れたような気分だ。たくさんの方々に支えられ、初めての100マイルの酸いも甘いも味わい、その難しさと奥深さを存分に楽しんだ。これは追求するべき楽しさだ。

スタート前、もしかすると100マイルは最初で最後のチャレンジになるかもしれないと思っていた。ズタボロになって、もう2度と出ないと思うかと恐れていた。

今、私は早く次の100マイルに出たくてしょうがない。100マイルの面白さに完全なハマってしまったようだ。

この素晴らしさを一人でも多くの方に体験してほしいと思う。その思いを忘れずに、www.fields-on-earth.com のツアーを企画していきたいと思う。

最後に、一緒に遠征してくれた丹羽選手、田辺さん、大瀬選手、大会情報を提供してくれた今回6位の Gay Anthony 選手、Frederic Ohanian さん、プライベートエイドで献身的にサポートしてくれた Raidersの皆さん Marcさん、大会主催者、ボランティアの皆さん、そして私をトレランの世界へ導いてくれて、初めてご一緒できた 鏑木選手に 心から感謝申し上げます。

そして応援メッセージのフラスクを作ってくれた娘と息子、お母さんに何よりも感謝しています。ありがとう。あれが無ければゴールできなかった。

まだまだ、私の挑戦は始まったばかり。もっともっと上を目指して頑張りたいと思います。

超長文 読んでくださった方、ありがとうございます!

そして、次は皆さんもこのグランレイドレユニオン「ディアゴナルデフー」に挑戦してみませんか?
2018参加ツアーは既に催行決定! 残り枠が少なくなっておりますので、お早めにお問い合わせください。









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